http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-091008.pdf
「毛髪の科学・疾患」
徳島大学大学院 皮膚科 荒瀬誠治教授
2009.10.8
2009 年10月8日放送
第108回日本皮膚科学会総会② What’s New in Dermatology より
2009年にラジオで放送された内容のようです。
ちなみに「マルホ皮膚科セミナー」のマルホというのは皮膚科の医薬品メーカー、マルホ株式会社のことです。
一部、気になる部分を抜粋してみました。
さて、私たち皮膚科医は、生まれつき毛髪に異常をみる患者さんによく出会います。
多いのが、先天性の乏毛症/無毛症の患者さんです。
約 10 年前より、世界中で研究が進み、無毛症や乏毛症の責任遺伝子の一部が分かってきました。
たとえば、外胚葉形成不全の患者さんでは、エクトディスプラシンという遺伝子に異常があるとか、ビタミンD依存性くる病Ⅱ型の患者さんには、ビタミンDレセプター遺伝子に異常があるなどです。
しかしながら、日常よく出会う、毛髪がちじれて、細く弱く、あまり伸びず、よく見ると毛髪数も非常に少なくなっている wooly hair/
Hypotrichosis simplex いわゆるちじれ毛や乏毛の患者さんでは、何が原因なのかは全く分かっていませんでした。
「毛髪がちじれて、細く弱く、あまり伸びず、よく見ると毛髪数も非常に少なくなっている」
まさにこれ!我が家の子供たちはこれです。
日常よく出会うんですね・・・。
後で病院で聞いた時に「以前はもっと少ないと思われていましたが、
今は10,000人に一人と言われています」
とおっしゃってました。もっと多いんじゃないの?と思ったりしますが、どうなんでしょう。
ここに風穴を開けたのが、新潟の下村さんたちで、彼らは内毛根鞘のヘンレ、ハクスレイの両層で発現する P2R5 という遺伝子の異常が、内毛根鞘の機能や形態に異常な変化をおこす結果、強いまっすぐな毛髪がつくれず、ちじれ毛や乏毛を引き起こすことを見出しました。
P2R5 遺伝子は、オレイル-L-リソホスファチジン酸という生理活性脂質の受容体をつくるのですが、その受容体に異常があるため、P2Y5 受容体以後のシグナルが全く内毛根鞘細胞で働かないために、内毛根鞘に異常が生じるわけです。
その結果、ちじれ毛をもとにした乏毛症という形の病態が生じます。
その他、コルネオデスモシン遺伝子に異常があっても、同じような乏毛症を引き起こすことが分かりました。
また、表皮の細胞接着で重要なデスモグレイン 4 の遺伝子異常は連珠毛様の乏毛症を引き起こします。
「新潟の下村さんたち」というのは、新潟大学の下村裕先生のことです。
この、「P2Y5受容体以後のシグナル」うんぬんは、自分なりにまとめてみましたので、「原因」のページをごらんください。
現在は、先天性脱毛症/乏毛症を引き起こす責任遺伝子として、コルネオデスモシン、デスモグレイン 4、ヘアレス、ビタミン D3 受容体、P2Y5、LIPH 等が分かってきました。これらの遺伝子産物の機能が分かると、きっと乏毛症、無毛症の患者さんの治療につながるものとして、私たちは期待しております。
治療法が確立されることを、切に願っています!
コメント
ちょっと関係ないですけど、新潟の下村教授、
想像と全然違ってました~(*^_^*)。
フレンドリーなジーパン姿ですね!