日本生化学会 東北支部 第77回 例会・シンポジウム 講演要旨集

日本生化学会 東北支部
第77回 例会・シンポジウム
講演要旨集

主催:日本生化学会
会期:平成23年7月23日(土)
会場:東北大学さくらホール

http://www.jbs-tohoku.jp/program77.pdf

リゾホスファチジン酸は体毛形成に関与する
〇井上飛鳥 1、有馬直明 1、新井洋由 2、青木淳賢 1,3
(1 東北大院・薬・分子細胞生化学、2 東京大院・薬・衛生化学、3 東北大院・医・代謝疾患コアセンター)
哺乳類において、体毛は毛包と呼ばれる皮膚内の上皮系組織で形成される。
毛包組織内において、種々の増殖因子や転写因子が協調的に作用することで正
常な体毛形成が進行する。これまでに、先天性体毛形成異常のヒト患者の解析
から、PA-PLA1(遺伝子シンボル名 LIPH)と P2Y5(遺伝子シンボル名 P2RY5)
の各遺伝子の変異が見つかっている。当研究室は以前、PA-PLA1が分泌型の酵
素であり、in vitro で生理活性脂質のリゾホスファチジン酸(LPA)を産生する
活性を有することを報告している。また、P2Y5 は G タンパク共役型受容体で
あり、脂質を認識するサブファミリーに属しているがそのリガンドは不明であ
った。PA-PLA1欠損患者と P2Y5 欠損患者が類似した体毛形成異常を示すこと
から、体毛形成過程において PA-PLA1が LPA を産生し P2Y5 を活性化する機
構が働くことが想定された。我々はこの仮説を検証するため、PA-PLA1遺伝子
欠損マウスを作製し、そのメカニズムを解析した。作製した PA-PLA1遺伝子
欠損マウスはヒト患者と同様の縮毛の体毛形成異常を示した。マウス毛包の
LPA 量を高感度 LC-MS/MS 法により定量したところ、PA-PLA1遺伝子欠損マ
ウスでは LPA がほぼ消失しており、PA-PLA1が生体内で LPA 産生を担うこと
が初めて判明した。さらに、体毛形成における LPA の下流の分子機構を検討し
たところ、TGF-の膜型前駆体からの切断が起こっていることを見出した。そ
こで、TGF-の切断を指標に P2Y5 の系を組み立てたところ、P2Y5 が LPA に
より活性化され膜型前駆体 TGF-の切断を引き起こすことがわかった。さらに、
この P2Y5 の活性化はリコンビナント PA-PLA1でも引き起こされた。これま
での in vitro のデータを考慮すると、PA-PLA1が形質膜の脂質二重層の外膜に
存在するホスファチジン酸のアシル基を切断し、産生されたLPAが膜上のP2Y5
受容体へ受け渡されていると想定される。以上より、毛包形成過程において、
PA-PLA1による LPA 産生と P2Y5 の活性化および TGF-の切断が起こってお
り、この経路が正常な体毛形成に必須であることが明らかとなった。

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